来 歴


しかえし


子どもなら
あんなに楽しそうな顔をして
人を笑えないのに
そのみっともない顔が見えないのは
不幸にして君ばかりだと
教えてやる
季節が変るごとに
少しずつ染まって行って
もう手に負えなくなった君に
知らせてやる
子どもより始末が悪いと
言ってやる
君はみたことがないか
鬼ごっこの鬼が落ちぶれて
ビルの谷間を歩いているのを
いつか見たことがないか
あの頃は空をつかまえようとしていた鬼が
めっきの勲章などつけねらい
あの頃は豆の木をよじのぼろうとしたジャックが
金貨の番人になりはててしまったのを
あの頃は人間が
こどもにそっくりであったし
けものとよぶかわりに
植物とよんでもまちがいではなかった
即物的な話題ばかりが
ひしめきあっているそこの町角で
こんな記憶を噛みしめていると
まるで童話だなと笑う顔がある
あの頃は君も子どもだった
だからめざましい未来へ
君はかけ上がるはずだった
いま君に何があるのだと聞いてやる
のっぺらぼうの顔にむかって
君の笑ったぶんを
そっくりそのままかえしてやる

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